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2010年7月13日 (火)

『辺野古不合意』制作余滴  (1)2匹の子犬

 山原(やんばる)の海の空は、今(7月)が一番美しい。水平線がさまざまな顔ですっきりとひとつの線を描く。穏やかな丸みをおびた水平線の上は、透きとおった青。海の藍を、まっすぐにうすめた青。リーフの端にあたる波が白くかたまって、ザァーと内海(イノー)に帯状に広がっていく。海の雲のようだ。

 今、私は、ドキュメンタリー映画『辺野古不合意』-名護の13年とその未来-をつくっている。遅々としてすすまない。あせる。それでも、そのあせりを封印して、土曜日は決まって川の修復工事で一日をすごす。14年前に本格的に立ち上げた、基地に頼らない自前の地域おこし、「エコネット・美(ちゅら)」の拠点の川の修復工事である。66才の中村保さんと二人で。東村川田育ちの保さんの全身にみなぎる<山原への愛着>と<先見性>にひっぱられて、壮大な作業にとりくんでいる。3年先をみすえての手作業工事。川の流れをもとにもどすという、とてつもない構想に嬉々としてとりくんでいる。亀の歩みよりおそい遊捗がまたいい。山原東海岸のヌーファの浜辺のジャングルで、初老の子犬2匹による壮遠大な実験である。街のにおいは全くない。2匹の子犬は、それぞれ自分の持ち場で、別々に働く。会話は行き・帰りと昼食のときだけ。時々保さんの自作の歌が遠くから風にはこばれてくる。不思議なほど休憩時が同じで、きっと保さんもアダン林の下で海を見ながら、歌っているのだろう。私は、ユウナの樹林の下で海を見ている。だあれもいない。風と鳥と波。極上の静けさ。

 私よりも2才年長の保さんは、ノグチゲラの研究で知る人ぞ知る山原人(ヤンバルンチュー)である。『ノグチゲラの里から地球の未来へ』というドキュメンタリーは、その中村保さんのノグチゲラ研究の集大成ともいえるものである。ノグチゲラという絶滅危惧種(CR)が世界ではじめてウラジロエノキという営巣木で子育てをしたシーンを撮影しながら、私の心は、30年以上もノグチゲラを追い続けてきたひとりの風狂の人・中村保さんを描いてみたいと思っていた。保さんの尽力で、東村は今年の6月に「ノグチゲラ保護条例」を制定した。ひとりの人の変えられない愛情が、「条例」を支えた。

 私は、今も月曜日から金曜日まで週26コマの授業をしている予備校経営者である。朝から夜まで、高3生・大受生を教え、夜10時から映画の編集にとりくんでいる。映画づくりが遅々たるのも当然である。撮影は99%自分でする。(自分の撮ったものでないと納得がいかない。)屋良好克という編集人といっしょに制作している。若い彼に、何かを伝えようとしている私がいる。それが、作品そのものの中に表れてほしいと思っている。予備校教師、エコネット・美作業員、そして映画づくり。3つの陽だまりのなかで生きている。私は「商人」という肩書きが一番好きだ。授業料、ガイド料、入場料(もしくはDVD販売費)で生計をたてている商人である。「予備校教師」、「ガイド」、「監督」は部分名にすぎない。

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コメント

「辺野古不合意」を見ました。上映会ができれば、と思っています。そしてできれば、輿石さんのお話も聞ければ、と思います。小さなグループですので、お呼びするのに財政的に厳しいので、どこかと共同でできないかと思案しております。
輿石さんが塾の先生をしていらっしゃることは存じております。3月の土、日は、いらしていただけそうでしょうか。

投稿: 古荘斗糸子 | 2010年12月 9日 (木) 09時58分

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